アッ=シャルフ(アラビア語: الشرح、”The Opening-Up of the Breast”「胸を開く」)または、アル・インシラーフ(アラビア語: الانشراح、”Solace” or “Comfort”「安息」)、は、クルアーンの第94章であり、8つの節から成る。その主題、長さ、スタイル、クルアーン中の位置から、このスーラはしばしばアッ・ドハー(スーラ93)と結合される。一般に、この2つは同時期にメッカで啓示されたと考えられている。ムハンマドが預言者となって間もない頃、民衆がムハンマドをどのように受け止めるか確信が持てなかった頃のことを指していると言われている。章名にあてられている「シャルフ」または「インシラーフ」は「薄く押し広げる」という意味。心が狭いと些事にこだわり、心が不安定になる。心を広げることによって、安堵できるようになる。
الشرح 【アラビア語】
朗読音声
胸を広げる (安堵) アッ=シャルフ【日本語訳】
慈悲あまねく、慈悲深いアッラーの御名において。
1 われらは、あなたの胸を広げたではないか。 2 あなたから、その重荷をとり除いたではないか。 3 それはあなたの背に、重くのしかかっていた。 4 それから、あなたの声望を高めたではないか。 5 それゆえ本当に、安楽は苦境と共にあり、 6 本当に、安楽は苦境と共にある。 7 それゆえ、(義務を) なし終えたとき、(崇拝に) 立ち返りなさい。 8 あなたの主に、すべてを明け渡しなさい。
解説
シャルハとは、「開放と拡大」を意味し、アッラーが聖なる預言者ムハンマド(pbuh)の心をあらゆる邪悪な影響から御守りになったことを意味する。
預言者がまだ少年であった時に、ガブリエルは、彼の胸を「開かれ」、彼の心を「洗われた」と伝えられている。彼は、10歳の時にこれを経験された。この出来事は、彼の養兄が目撃したと伝えられている。さらに、多くの伝承では、彼の胸には傷跡があったという話が語られている。
預言者は、現実と真理についての知識の探求に精力的に取り組んだ。神は彼にこの知識を授け、彼の心を真理の深い気づきへと導かれた。
その後、彼はマッカで神の唯一性を説き始め、厳しい敵に直面しなければならなかったが、このような逆境のおかげで、彼は国中に知られるようになったのである。預言者とムスリムたちが直面した困難は一時的で一過性のものであり、最終的な成功は永続的で拡大し続けるものだった。
これは現世における神の掟である。それゆえ、人は初めのうちは困難な状況に直面しなければならないが、辛抱強く忍耐すれば、この苦難は新たに楽な状況への足がかりとなる。それゆえ、人は常に神を仰ぎ、自分の能力に応じて努力を続けていかなければならない。
アッラーの預言者たちは皆、表向きの努力と勤勉さ、内側にある決意と勇気を伴う行動、そして熱心な祈りによって、必然的に勝利を修めたのである。またこの章では、もし人が自分の能力を最大限に発揮して懸命に働いても、祈りを捧げなければ、目的は達成されないと伝えている。同様に、祈りだけで努力を怠るのであれば、望みの目的を達成することはできない。
THE SOOTHING (ash-Sharh)【英語訳】
In the name of God the Gracious, the Merciful.
1 Did We not soothe your heart? 2 And lift from you your burden. 3 Which weighed down your back? 4 WAnd raised for you your reputation? 5 With hardship comes ease. 6 With hardship comes ease. 7 When your work is done, turn to devotion. 8 And to your Lord turn for everything.
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