【コーラン】アラビア語☪日本語☪英語☪解釈☪音声
ルクマーン(アラビア語: لقمان, ローマ字表記: luqmān)は、イスラム教の聖典クルアーンの第31章(スーラ)である。34の節から成り、その章名は12-19節にある賢者ルクマーンの言及とその息子への忠告に由来する。ルクマーンはアラブ・イスラーム世界に語り継がれ、尊敬を集める賢者であるが、ユダヤ教系の文献においては言及のない未知の人物である。彼は黒人の元奴隷もしくは大工であったとされている。本章は、迫害の只中にあったムスリムたちに、やがて必ず成功を収めるであろうことを確証するものである。イスラム教の伝統的な年譜(asbāb al-nuzūl)によれば、ムハンマドのメッカ時代の中頃に啓示されたとされており、通常メッカ期のスーラに分類される。
31. LUQMAN (Luqman)
لقمان【アラビア語】
アラビア語 ルクマーン ☟
بِسْمِ اللَّهِ الرَّحْمَٰنِ الرَّحِيمِ
١ الم
٢ تِلْكَ آيَاتُ الْكِتَابِ الْحَكِيمِ
٣ هُدًى وَرَحْمَةً لِلْمُحْسِنِينَ
٤ الَّذِينَ يُقِيمُونَ الصَّلَاةَ وَيُؤْتُونَ الزَّكَاةَ وَهُمْ بِالْآخِرَةِ هُمْ يُوقِنُونَ
٥ أُولَٰئِكَ عَلَىٰ هُدًى مِنْ رَبِّهِمْ ۖ وَأُولَٰئِكَ هُمُ الْمُفْلِحُونَ
٦ وَمِنَ النَّاسِ مَنْ يَشْتَرِي لَهْوَ الْحَدِيثِ لِيُضِلَّ عَنْ سَبِيلِ اللَّهِ بِغَيْرِ عِلْمٍ وَيَتَّخِذَهَا هُزُوًا ۚ أُولَٰئِكَ لَهُمْ عَذَابٌ مُهِينٌ
٧ وَإِذَا تُتْلَىٰ عَلَيْهِ آيَاتُنَا وَلَّىٰ مُسْتَكْبِرًا كَأَنْ لَمْ يَسْمَعْهَا كَأَنَّ فِي أُذُنَيْهِ وَقْرًا ۖ فَبَشِّرْهُ بِعَذَابٍ أَلِيمٍ
٨ إِنَّ الَّذِينَ آمَنُوا وَعَمِلُوا الصَّالِحَاتِ لَهُمْ جَنَّاتُ النَّعِيمِ
٩ خَالِدِينَ فِيهَا ۖ وَعْدَ اللَّهِ حَقًّا ۚ وَهُوَ الْعَزِيزُ الْحَكِيمُ
١٠ خَلَقَ السَّمَاوَاتِ بِغَيْرِ عَمَدٍ تَرَوْنَهَا ۖ وَأَلْقَىٰ فِي الْأَرْضِ رَوَاسِيَ أَنْ تَمِيدَ بِكُمْ وَبَثَّ فِيهَا مِنْ كُلِّ دَابَّةٍ ۚ وَأَنْزَلْنَا مِنَ السَّمَاءِ مَاءً فَأَنْبَتْنَا فِيهَا مِنْ كُلِّ زَوْجٍ كَرِيمٍ
١١ هَٰذَا خَلْقُ اللَّهِ فَأَرُونِي مَاذَا خَلَقَ الَّذِينَ مِنْ دُونِهِ ۚ بَلِ الظَّالِمُونَ فِي ضَلَالٍ مُبِينٍ
١٢ وَلَقَدْ آتَيْنَا لُقْمَانَ الْحِكْمَةَ أَنِ اشْكُرْ لِلَّهِ ۚ وَمَنْ يَشْكُرْ فَإِنَّمَا يَشْكُرُ لِنَفْسِهِ ۖ وَمَنْ كَفَرَ فَإِنَّ اللَّهَ غَنِيٌّ حَمِيدٌ
١٣ وَإِذْ قَالَ لُقْمَانُ لِابْنِهِ وَهُوَ يَعِظُهُ يَا بُنَيَّ لَا تُشْرِكْ بِاللَّهِ ۖ إِنَّ الشِّرْكَ لَظُلْمٌ عَظِيمٌ
١٤ وَوَصَّيْنَا الْإِنْسَانَ بِوَالِدَيْهِ حَمَلَتْهُ أُمُّهُ وَهْنًا عَلَىٰ وَهْنٍ وَفِصَالُهُ فِي عَامَيْنِ أَنِ اشْكُرْ لِي وَلِوَالِدَيْكَ إِلَيَّ الْمَصِيرُ
١٥ وَإِنْ جَاهَدَاكَ عَلَىٰ أَنْ تُشْرِكَ بِي مَا لَيْسَ لَكَ بِهِ عِلْمٌ فَلَا تُطِعْهُمَا ۖ وَصَاحِبْهُمَا فِي الدُّنْيَا مَعْرُوفًا ۖ وَاتَّبِعْ سَبِيلَ مَنْ أَنَابَ إِلَيَّ ۚ ثُمَّ إِلَيَّ مَرْجِعُكُمْ فَأُنَبِّئُكُمْ بِمَا كُنْتُمْ تَعْمَلُونَ
١٦ يَا بُنَيَّ إِنَّهَا إِنْ تَكُ مِثْقَالَ حَبَّةٍ مِنْ خَرْدَلٍ فَتَكُنْ فِي صَخْرَةٍ أَوْ فِي السَّمَاوَاتِ أَوْ فِي الْأَرْضِ يَأْتِ بِهَا اللَّهُ ۚ إِنَّ اللَّهَ لَطِيفٌ خَبِيرٌ
١٧ يَا بُنَيَّ أَقِمِ الصَّلَاةَ وَأْمُرْ بِالْمَعْرُوفِ وَانْهَ عَنِ الْمُنْكَرِ وَاصْبِرْ عَلَىٰ مَا أَصَابَكَ ۖ إِنَّ ذَٰلِكَ مِنْ عَزْمِ الْأُمُورِ
١٨ وَلَا تُصَعِّرْ خَدَّكَ لِلنَّاسِ وَلَا تَمْشِ فِي الْأَرْضِ مَرَحًا ۖ إِنَّ اللَّهَ لَا يُحِبُّ كُلَّ مُخْتَالٍ فَخُورٍ
١٩ وَاقْصِدْ فِي مَشْيِكَ وَاغْضُضْ مِنْ صَوْتِكَ ۚ إِنَّ أَنْكَرَ الْأَصْوَاتِ لَصَوْتُ الْحَمِيرِ
٢٠ أَلَمْ تَرَوْا أَنَّ اللَّهَ سَخَّرَ لَكُمْ مَا فِي السَّمَاوَاتِ وَمَا فِي الْأَرْضِ وَأَسْبَغَ عَلَيْكُمْ نِعَمَهُ ظَاهِرَةً وَبَاطِنَةً ۗ وَمِنَ النَّاسِ مَنْ يُجَادِلُ فِي اللَّهِ بِغَيْرِ عِلْمٍ وَلَا هُدًى وَلَا كِتَابٍ مُنِيرٍ
٢١ وَإِذَا قِيلَ لَهُمُ اتَّبِعُوا مَا أَنْزَلَ اللَّهُ قَالُوا بَلْ نَتَّبِعُ مَا وَجَدْنَا عَلَيْهِ آبَاءَنَا ۚ أَوَلَوْ كَانَ الشَّيْطَانُ يَدْعُوهُمْ إِلَىٰ عَذَابِ السَّعِيرِ
٢٢ وَمَنْ يُسْلِمْ وَجْهَهُ إِلَى اللَّهِ وَهُوَ مُحْسِنٌ فَقَدِ اسْتَمْسَكَ بِالْعُرْوَةِ الْوُثْقَىٰ ۗ وَإِلَى اللَّهِ عَاقِبَةُ الْأُمُورِ
٢٣ وَمَنْ كَفَرَ فَلَا يَحْزُنْكَ كُفْرُهُ ۚ إِلَيْنَا مَرْجِعُهُمْ فَنُنَبِّئُهُمْ بِمَا عَمِلُوا ۚ إِنَّ اللَّهَ عَلِيمٌ بِذَاتِ الصُّدُورِ
٢٤ نُمَتِّعُهُمْ قَلِيلًا ثُمَّ نَضْطَرُّهُمْ إِلَىٰ عَذَابٍ غَلِيظٍ
٢٥ وَلَئِنْ سَأَلْتَهُمْ مَنْ خَلَقَ السَّمَاوَاتِ وَالْأَرْضَ لَيَقُولُنَّ اللَّهُ ۚ قُلِ الْحَمْدُ لِلَّهِ ۚ بَلْ أَكْثَرُهُمْ لَا يَعْلَمُونَ
٢٦ لِلَّهِ مَا فِي السَّمَاوَاتِ وَالْأَرْضِ ۚ إِنَّ اللَّهَ هُوَ الْغَنِيُّ الْحَمِيدُ
٢٧ وَلَوْ أَنَّمَا فِي الْأَرْضِ مِنْ شَجَرَةٍ أَقْلَامٌ وَالْبَحْرُ يَمُدُّهُ مِنْ بَعْدِهِ سَبْعَةُ أَبْحُرٍ مَا نَفِدَتْ كَلِمَاتُ اللَّهِ ۗ إِنَّ اللَّهَ عَزِيزٌ حَكِيمٌ
٢٨ مَا خَلْقُكُمْ وَلَا بَعْثُكُمْ إِلَّا كَنَفْسٍ وَاحِدَةٍ ۗ إِنَّ اللَّهَ سَمِيعٌ بَصِيرٌ
٢٩ أَلَمْ تَرَ أَنَّ اللَّهَ يُولِجُ اللَّيْلَ فِي النَّهَارِ وَيُولِجُ النَّهَارَ فِي اللَّيْلِ وَسَخَّرَ الشَّمْسَ وَالْقَمَرَ كُلٌّ يَجْرِي إِلَىٰ أَجَلٍ مُسَمًّى وَأَنَّ اللَّهَ بِمَا تَعْمَلُونَ خَبِيرٌ
٣٠ ذَٰلِكَ بِأَنَّ اللَّهَ هُوَ الْحَقُّ وَأَنَّ مَا يَدْعُونَ مِنْ دُونِهِ الْبَاطِلُ وَأَنَّ اللَّهَ هُوَ الْعَلِيُّ الْكَبِيرُ
٣١ أَلَمْ تَرَ أَنَّ الْفُلْكَ تَجْرِي فِي الْبَحْرِ بِنِعْمَتِ اللَّهِ لِيُرِيَكُمْ مِنْ آيَاتِهِ ۚ إِنَّ فِي ذَٰلِكَ لَآيَاتٍ لِكُلِّ صَبَّارٍ شَكُورٍ
٣٢ وَإِذَا غَشِيَهُمْ مَوْجٌ كَالظُّلَلِ دَعَوُا اللَّهَ مُخْلِصِينَ لَهُ الدِّينَ فَلَمَّا نَجَّاهُمْ إِلَى الْبَرِّ فَمِنْهُمْ مُقْتَصِدٌ ۚ وَمَا يَجْحَدُ بِآيَاتِنَا إِلَّا كُلُّ خَتَّارٍ كَفُورٍ
٣٣ يَا أَيُّهَا النَّاسُ اتَّقُوا رَبَّكُمْ وَاخْشَوْا يَوْمًا لَا يَجْزِي وَالِدٌ عَنْ وَلَدِهِ وَلَا مَوْلُودٌ هُوَ جَازٍ عَنْ وَالِدِهِ شَيْئًا ۚ إِنَّ وَعْدَ اللَّهِ حَقٌّ ۖ فَلَا تَغُرَّنَّكُمُ الْحَيَاةُ الدُّنْيَا وَلَا يَغُرَّنَّكُمْ بِاللَّهِ الْغَرُورُ
٣٤ إِنَّ اللَّهَ عِنْدَهُ عِلْمُ السَّاعَةِ وَيُنَزِّلُ الْغَيْثَ وَيَعْلَمُ مَا فِي الْأَرْحَامِ ۖ وَمَا تَدْرِي نَفْسٌ مَاذَا تَكْسِبُ غَدًا ۖ وَمَا تَدْرِي نَفْسٌ بِأَيِّ أَرْضٍ تَمُوتُ ۚ إِنَّ اللَّهَ عَلِيمٌ خَبِيرٌ
ルクマーン 朗読音声
ルクマーン【日本語訳】
慈悲あまねく、慈悲深いアッラーの御名において。
1 アリフ、ラーム、ミーム。
2 これは、
賢明な啓典の御しるし。
3 行いの善良な者のための導きと慈悲。
4 礼拝のつとめを守り、喜捨をし、来世を確信する者たち。
5 これらの者こそ、その主からの導きの上にある者。またこれらの者こそ、栄える者。
6 人々の中には、気晴らしの伝聞を買い込んで、知識なくしてアッラーの道から
(人を) 迷わせ、それを笑いごとにする者がある。これらの者には、屈辱の懲罰があるだろう。
7 また、われらのしるしが読み聞かされるとき高慢に背を向ける者。まるでそれが聞こえないかのように、耳が鈍いかのように、彼らには、痛烈な懲罰の報せを伝えなさい。
8 本当に、信じて正しい行いをする者には至福の楽園があり、
9 その中に、永遠に住まうだろう。アッラーの約束は真理である。もっとも威力ある御方、もっとも賢明な御方。
10 かの御方は、あなたがたの
目に見える支柱なくして諸天を創造し、また、あなたがたと共に揺れることのないように、大地には不動の山々を据えつけた。またその中に、ありとあらゆる生きものを一面に散らばせた。また、われらは空から雨を降らせ、その中に、様々な貴い種のすべてを育んだ。
11 これがアッラーの創造というもの、この御方をさし置いて他のものが、何を創造したか見せてみなさい。いいや、不正をなす者は明らかな誤りの中にいる。
12 われらは
ルクマーンに知恵を与えた。「アッラーに感謝しなさい。誰であれ、感謝する者は自分のために感謝する。そして誰が恩を忘れようと
(、それは自分を損ねるだけであり)、本当にアッラーは満ち足りた御方、称賛にふさわしい御方」。
13 ルクマーンが、その息子に助言し、こう言ったときのこと
(を思いなさい)。「
私の息子よ。アッラーに何ものかを同列に連ねてはならない。本当に、何ものかを同列に連ねるのは大それた不正である」。
14 われらは人間に対し、その両親について指図しておいた。母は弱りに弱りながら
(その子を胎内に) 身ごもり、また乳離れまでには二年かかる。われに、また
あなたがたの両親に感謝しなさい。行き着く先はわれにある。
15 しかし、もし彼らがあなたに対し、つとめてあなたの知らないものをわれと同列に連ねさせようとするなら、彼らのいずれにも従ってはならない。しかし現世においては親切に彼らに付き添いなさい。そして、悔い改めて常にわれに立ち返る道に従いなさい。そののち、あなたがたの帰りゆく先はわれにある。われはあなたがたに、あなたがたの行ってきたことについて告げ報せるだろう。
16 (ルクマーンは言った。)「私の息子よ。本当に、たとえからしの種ひと粒の重さであろうと、そしてたとえそれが岩の中に、あるいは空の中に、あるいは地の中にあろうと、アッラーはそれを持ち出すだろう。本当にアッラーは細やかな、熟知している御方である。
17 私の息子よ。礼拝のつとめを守り、親切を勧め、非道を禁じなさい。そしてあなたに降りかかることをよく耐えていなさい。それが、大いなる決心のあらわれというもの。
18 人々を見下して、あなたの頬を背けてはならない。傲慢な態度で地上を歩いてはならない。アッラーは、思い上がって自慢ばかりする者を愛さない。
19 歩みは穏やかにし、声音は控えめにしなさい。声音のうち、もっとも聞き苦しいのはろばの声音」。
20 あなたがたは、アッラーが諸天にあるもの、大地にあるものは何であれあなたがたのために使役させ、あなたがたを、
外側においても内側においてもその恩寵に浴させているのがわからないのか。人々の中には知識も導きも、あるいは光を照らす啓典もなくして、アッラーについて言い争う者がある。
21 彼らが「アッラーが下したものに従いなさい」と言われるとき、彼らは「いいや、私たちは先祖から習ったとおりのものに従う」などと言う。たとえ悪魔が彼らを烈火の懲罰に呼び招いているとしてもか。
22 誰であれ善良な行いをし、自分自身をアッラーにあずけている者は、もっとも信頼のおける把手を握る。
ものごとの結末はアッラーに属する。
23 (ムハンマドよ、) 誰か
(真理を) 拒む者があっても、その者が拒ぶのを嘆いてはならない。彼らの帰るところはわれらにある。われらは、彼らが行ってきたことを告げ報せるだろう。本当にアッラーは、胸の中に抱くことを知っている。
24 われらは、彼らをわずかばかり楽しませ、そののちに手厳しい懲罰に追いやるだろう。
25 もしあなたが彼らに「諸天と大地を創造したのは誰か」と尋ねたなら、彼らは必ず「アッラー」と言うだろう。言いなさい。「アッラーに称賛あれ」。いいや、多くの者は何も知らない。
26 諸天と大地にあるものは、すべてアッラーに属する。本当にアッラーこそは満ち足りた御方。称賛にふさわしい御方。
27 たとえ
地上のすべての樹木が筆で、「その墨として」海に後から七つの海を加えたとしても、アッラーの御言葉は
(書き) 尽くせない。本当にアッラーは威力あり、もっとも賢明である。
28 あなたがたを創造するのも復活させるのも、たったひとりをそうするかのようなもの。本当にアッラーは、すべてを聞き、すべてを見る。
29 あなたは見ないのか、アッラーが
夜を昼に入らせ、また昼を夜に入らせるのを。また太陽と月を使役し、いずれも定められた
(究極の) 時までよどみなく
(軌道を) 走らせるのを。また本当にアッラーは、あなたがたの行いを熟知しているのを。
30 それはアッラーこそが真理であり、この御方をさし置いて彼らが祈っているものは嘘いつわりであるため。本当にアッラーこそ
至高の御方、至大の御方。
31 あなたは見ないのか、その御しるしをあなたがたに見せるために、アッラーの
恩寵により船が海を渡るのを。本当にその中には、よく耐える者、感謝する者すべてへの御しるしがある。
32 波が天蓋のように彼らに覆いかぶさるとき、彼らはアッラーに祈り、宗教において真摯になる。ところが、かの御方が彼らを陸地へ送り届けると、彼らのうち
ある者はあいまいな態度をとるようになる。しかし裏表のある者、
(真理を) 拒む者を除いては、誰もわれらのしるしを拒まない。
33 人々よ。あなたがたは主を畏れなさい。そして
親が子に報いることも、子が親に報いることもできないその日を恐れなさい。本当にアッラーの約束は真理である。それゆえ現世の生に欺かれてはならない。アッラーについて欺く者に、欺かれてはならない。
34 本当に、かの
(終末の) 時の知識はアッラー、かの御方の御許にのみある。御方は雨を降らせる。かの御方は子宮の中にあるものを知る。
明日に得るものが何であるのか、誰にもわからない。どの地で死ぬことになるのか、誰にもわからない。アッラーはすべてを知り、熟知している。
ルクマーン の解説と解釈
☪︎ 賢明な啓典の御しるし
賢者と呼ばれた人物の名を章名にしていることからもわかる通り、本章の主題は知恵に関連しており、クルアーンもそれにふさわしく「賢明な啓典」、あるいは知恵の書と呼ばれている。12節では、賢者ルクマーンへの言及がある。ここでいう「ハキーム(賢明)」とは、人間と神の知識に精通しているだけではなく、実際のアマル(行動)を通して実践している人を意味する。自らの力の及ぶ限り、人生において正しい道を進む人を指す。そうした人の知識は正確かつ実践的だが、人間は完璧ではない以上、必ずしも完全であるというわけではない。
☪︎ 迷わせ、それを笑いごとにする者
言葉には2つのタイプがある。ひとつは良き助言を与えてくれるもの、もうひとつは娯楽である。前者は、人に自分の責任を自覚させ、不適切なことよりも善いことをするよう促す。しかし、いつの時代も、助言の言葉には関心を持つ者が実に少ない。人間は常に、楽しませてもらうことを好む性質がある。良い助言を与えてくれる本はたくさんあるが、心をそらすような本や、真面目な行動を必要としないような本の購入頻度が高いのだ。
純粋に娯楽的な(つまり浪費的な)楽しみに没頭するよう、わざわざ他人を誘い込む人の罪は大きい。なぜなら、その人は、人々を無意味な行動に夢中にさせ、より重大な事柄に注意を向けることができないようにしているからである。
うぬぼれは人間にとって最悪の性質である。うぬぼれの強い人間の前に真実が現れても、それを受け入れない。軽蔑して見過ごし、無視して押し通そうとする。信者はまったくその反対だと言える。助言を求める彼らの性質は、真理を受け入れ、自分の人生を真理に完全に委ねることを強く望むものだ。
☪︎ 目に見える支柱なくして諸天を創造
宇宙は無限の空間に存在している。この宇宙で無数の大きな星々が絶えず巡っていることは、畏敬の念を抱かせる偉大な現象である。その中で、地球は特別な球体であり、数多くの要素や仕組みによって人間の生活が成り立っている。高い山々が地球のバランスを保っていることも、水や緑などの貴重な資源が豊かであることも、すべてが完璧な管理体制であることを示している。
では、この巨大なシステムを管理できるのは、全能の神以外に誰がいるだろうか? そうである以上、人間が神以外のものを崇拝するのは正当なことなのだろうか?
☪︎ ルクマーンに知恵を与えた
本章に登場する賢者ルクマーンは、アラブの民間伝承に属する人物である。彼の人生についてはほとんど知られていない。一般に、彼は長寿であったとされている。奴隷もしくは大工であったとされ、世俗的な権力に背を向け、王侯の求めを拒み、つつましい暮らしを送ったと伝えられている。
ルクマーンについては、賢明で神を畏れる人物であったということ以外、歴史上ほとんど記録されていない。クルアーンによると、ルクマーンは神に感謝を捧げる者であり、父親として息子に多神教から身を守るよう助言したという。多神教とは、神以外の存在が人間に恩恵をもたらす存在であり、それらに感謝すべきだとするものである。唯一神信仰は、神こそが唯一の人間に恩恵を与えてくださる方であり、すべての感謝の気持ちはそのお方にのみ向けられるべきであるという強い意識から生まれたものである。
☪︎ 私の息子よ
「私の息子よ」、あるいは「私の愛する幼い息子よ」。息子と呼ばれた人物が、子どもであるか成人であるかに関わらず、自分よりも小さいものとして深い愛情を示す言語表現である。
☪︎ あなたがたの両親に感謝しなさい
人生を始める契機を与えてくれた両親に対する感謝は、最終的には一個の独立した人間として、自らの存在の根源である神に対する感謝へと通じるものとして規定されている。
神に次いで、人の忠誠を第一に求めるのは両親である。しかし、もし両親の望みが神の意志と衝突するのであれば、神の意志を優先し、両親の望みを二の次にしなければならない。しかし、その場合でも、これまで通り両親に仕え続ける必要がある。
2つの異なる要求の間でこのバランスを取ることは、イスラームの知恵のもっとも優れた一例であり、すべての成功の秘訣はこの知恵に隠されている。
人間に対する義務と神に対する義務が矛盾する場合、それは人間の側の理解に誤りがあることを意味する。私たちは人間よりもまず神に従うべきであり、そのことを前提として何ごとも判断する必要がある。
☪︎ 外側においても内側においてもその恩寵に
神の恩寵と諸々の恩恵は、常に私たちに働きかけている。私たちはそれを目にすることもあれば、見過ごしていることもある。私たちの感覚で捉えられるものの中に、神の恩寵を見ることは可能である。内面的、あるいは霊的な領域でのことなら、私たちのヴィジョンが明瞭でありさえすれば、神の恩寵がどう機能しているかが理解できることもある。多くの場合、私たちは恩寵を意識することなく過ごしている。しかしそれらが常に働きかけていることに変わりはない。
現在の世界は、完全に人間の存在にとって好都合なように作られている。つまり、現世は人間が必要とするあらゆるものを豊富に備えている。にもかかわらず、人間はこの宇宙の創造主に感謝していない。
☪︎ ものごとの結末はアッラーに属する
すべての人の本性は、思考や行動、またその人の存在そのものが方向性を持っている。信者は、その方向が完全に神にむいている者である。信者の人生は、神へと向かう人生であり、不信仰者の人生は神へと向かっていないものである。
神の方へ向いている人は、実際、正しいゴールに向かっており、そこで成功を見出すことができる。反対に、神をないがしろにし、神以外に関心をそそぐ者は、方向性も目標もない生き方になってしまう。当面は一時的な恩恵を与えられるかもしれないが、来世の永続的な人生においては、罰を受ける以外には何もないのである。
神こそは究極の目的地である。あらゆるものは神に還りゆく、人間は神に服従せねばならず、また神にのみ服従するのでなければならない。
☪︎ 地上のすべての樹木が筆で
宇宙はあまりにも広大で膨大であるため、神以外が創造したとは誰も主張できない。しかし、この事実を受け入れているにもかかわらず、人間の悲惨なところは、神以外のものに卓越した偉大な地位を与えてしまうことだ。この非合理的な行動は、多神教、あるいは神にパートナーを帰属させること(シルク)として知られている。
神の威光は偉大すぎて、言葉で表現することはできない。物理学の歴史は何千年にもわたる。しかし、数え切れないほどの研究にもかかわらず、いまだに完全な情報を得ることができないものがたくさんある。例えば、人間は宇宙に存在する星の正確な数も、地球上に生息する動物や植物の種の数もわかっていない。木の葉や砂粒の本当の性質や組成も、海に隠された多くの不思議さえもまだ解明されていない。要するに、この世には大小を問わず、人間が完全な情報を得ているものはほとんどないのだ。このこと自体、世界のすべての木々を削りペンに、すべての海をインクにしたとしても、神の無数の偉業を記録するにはまだ不十分であることを証明するには十分である。
神の御言葉、すなわち神の驚くべき御しるしと定めは数限りなく、あらゆる木々を筆にし、またすべての広大な海原を七倍に増やしてインクにしたとしても、とうてい書き尽くせるものではない。神の啓示の書は、どれも人間がその人生を通して理解し、また活用できる事柄を扱っている。同時に、人間には絶対に推測することもできない神秘を超えた神秘、謎を超えた謎が存在する。私たち人間が、たとえ無限の資源を用いて神への賛美を書き記そうとも、神の威力と栄光、そして叡智を十分に説き明かすことはできない。
☪︎ 夜を昼に入らせ、また昼を夜に入らせる
夜が昼に、そして昼が夜になるのは、現代では地球の自転として知られている。地球が完璧な精度で自転を続けていることや、他にも似たような事象がいくつかあることは、想像を絶するほど、この宇宙のであり主が偉大であることを示している。このような現状において、創造主以外に誰が崇拝され得るだろうか?
☪︎ 至高の御方、至大の御方
ここでも再び、唯一絶対の神という点が強調される。唯一、神のみが永遠の実在である。神と競い合う存在、あるいは権能を分かち合う同等の存在として挙げられるものはすべて虚偽に他ならない。神は私たちの想像をはるかに超越した、至高の創造者である。
☪︎ 恩寵により船が海を渡る
自然の持つ様々な素晴らしい力は、人間が用いることができるようにとそれらを制御する神の恩寵として人間に授けられたものである。「サッバール(よく耐える者)」という語は、「シャクール(感謝する者)」を強調・集約する意味もある。
海を航行する船舶が、沈没の心配をすることなく乗客や物資を安全に輸送できるのは、全能の神が人間に耐航性の高い船舶を建造する技術を授け、風や海流に関する知識を与えてくださったおかげである。間違いなく、これは偉大な御しるしである。しかし、忍耐強く、感謝する人だけが、そこから教訓を学ぶことができる。忍耐強い人とは、不適切な感情に左右されない人であり、感謝する人とは、自分の領域を超えて存在する真実を認めることができる人である。
しかし、船が荒天に巻き込まれ、海が荒れれば、船の乗組員や乗客は自分たちの無力さを思い知る。その時、彼らはいわゆる偉人たちへの畏敬の念を忘れ、神だけに呼びかけるようになる。人々は上記の経験から教訓を導き出し、真理と正義の道を堅持すべきなのだが、実際にそうしている人は非常に少ない。多くの人は、困ったときには決まって神を思い出し、事態が好転すると傲慢と恩知らずの道に逆戻りする。
☪︎ ある者はあいまいな態度をとる
絶えず神の援助を探し求め、正義と、課された義務とを果たすことによって神の慈悲への感謝を示す、31節で言及されるような人々とは異なり、単なる恐怖心に突き動かされて崇拝を行う類いの人々が存在する。彼らは、身体的な危険にさらされるとき – 彼らが唯一、感じ取れる危険がそれである – 、例えば海で嵐に巻き込まれたときには、彼らも真に神について熟考する。しかし、ひとたび危険が過ぎ去ってしまえば、彼らはたちまち無関心になり、再び悪と親身になりつつ、善人らしくふるまうようになる。
31節とこの節は、アブー・ジャフルの息子イクリマについての啓示でもある。マッカ征服の後に、絞首の憂き目にあうのを恐れ、海路伝いにヤマンへ逃げようとした彼は、海上で強い嵐に見舞われた。彼は不信仰であったことを後悔し、悔い改めて神に祈り、生き延びることができたなら、神の預言者の許へ行き、過ちを詫びてイスラームの道に入ることを決心した。彼の場合は、実際に残りの生涯をイスラームのために捧げて過ごした。
☪︎ 親が子に報いることも、子が親に報いることもできない
現世では、人間は試されるための手段として、一定の自由を与えられている。人々はこの試された自由を、本物の自由だと思い込んでいる。これは何よりも愚かな幻想である。人間のあらゆる悪は、この幻想から生まれる。見かけ上、人間はこの世で何をしても自由で、それを監視する者は誰もいないように見える。しかし実際には、非常に困難な時期が待ち受けている。その時には、父と息子という親子でさえ互いに支え合うことができなくなる。
清算の日、誰も自分以外の他者を助けることはできない。最も愛情ある父親であっても自分の息子を助けることはできず、またその逆も然りである。誰もが、それぞれに自分自身に対する責任を負っている。
☪︎ 明日に得るものが何であるのか、誰にもわからない
知識や神秘に関わる問いが、ここでは雨と子宮の両方を通して知らしめられる。実際にこの節には、本章の主要な五つの論点が網羅されている。(1)時間、(2)雨 (の持つ意味)、(3)新たな生命の誕生(子宮)、(4)日々、私たちが過ごしている身体上の生、そして(5)私たちの死についてである。
『審判の日が来るのなら、それはいつなのか』と問うことは、人間の枠を超えた問いではないのだろうか? 人間は、自分を取り巻く身近なものの将来について知ることができない。例えば、雨の降る日、母親の胎内にいる赤ん坊の成長、将来の収入、死の時期などを正確に予測することはできない。しかしながら、その限られた知識をもってしても、現実として受け入れているのである。同じように、人は審判の日の到来を、それについてのわずかな兆候に基づいて信じるべきである。
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LUQMAN (Luqman)【英語訳】
英語 ルクマーン ☟
In the name of God the Gracious, the Merciful.
1 Alif, Lam, Meem.
2 These are the Verses of the Wise Book.
3 A guide and a mercy for the righteous.
4 Those who observe the prayer, and pay the obligatory charity, and are certain of the Hereafter.
5 These are upon guidance from their Lord. These are the successful.
6 Among the people is he who trades in distracting tales; intending, without knowledge, to lead away from God’s way, and to make a mockery of it. These will have a humiliating punishment.
7 And when Our Verses are recited to him, he turns away in pride, as though he did not hear them, as though there is deafness in his ears. So inform him of a painful punishment.
8 As for those who believe and do good deeds – for them are the Gardens of Bliss.
9 Dwelling therein forever. The promise of God is true. He is the Mighty, the Wise.
10 He created the heavens without pillars that you can see, and placed stabilizers on earth lest it shifts with you, and scattered throughout it all kinds of creatures. And from the sky We sent down water, and caused to grow therein of every noble pair.
11 Such is God’s creation. Now show me what those besides Him have created. In fact, the wicked are in obvious error.
12 We endowed Luqman with wisdom, “Give thanks to God.” Whoever is appreciative – is appreciative for the benefit of his own soul. And whoever is unappreciative – God is Sufficient and Praiseworthy.
13 When Luqman said to his son, as he advised him, “O my son, do not associate anything with God, for idolatry is a terrible wrong.”
14 We have entrusted the human being with the care of his parents. His mother carried him through hardship upon hardship, weaning him in two years. So give thanks to Me, and to your parents. To Me is the destination.
15 But if they strive to have you associate with Me something of which you have no knowledge, do not obey them. But keep them company in this life, in kindness, and follow the path of him who turns to Me. Then to Me is your return; and I will inform you of what you used to do.
16 “O my son, even if it were the weight of a mustard-seed, in a rock, or in the heavens, or on earth, God will bring it to light. God is Kind and Expert.
17 O my son, observe the prayer, advocate righteousness, forbid evil, and be patient over what has befallen you. These are of the most honorable traits.
18 And do not treat people with arrogance, nor walk proudly on earth. God does not love the arrogant showoffs.
19 And moderate your stride, and lower your voice. The most repulsive of voices is the donkey’s voice.”
20 Do you not see how God placed at your service everything in the heavens and the earth? How He showered you with His blessings, both outward and inward? Yet among the people is he who argues about God without knowledge, without guidance, and without an enlightening Scripture.
21 And when it is said to them, “Follow what God has revealed,” they say, “Rather, we follow what we found our parents devoted to.” Even if Satan is calling them to the suffering of the Blaze?
22 Whoever submits himself wholly to God, and is a doer of good, has grasped the most trustworthy handle. With God rests the outcome of all events.
23 Whoever disbelieves – let not his disbelief sadden you. To Us is their return. Then We will inform them of what they did. God knows what lies within the hearts.
24 We give them a little comfort; then We compel them to a harsh torment.
25 And if you ask them, “Who created the heavens and the earth?” They will say, “God.” Say, “Praise be to God.” But most of them do not know.
26 To God belongs everything in the heavens and the earth. God is the Rich, the Praised.
27 If all the trees on earth were pens, filled by the ocean, with seven more oceans besides, the Words of God would not run out. God is Majestic and Wise.
28 Your creation and your resurrection are only as a single soul. God is Hearing and Seeing.
29 Have you not seen how God merges the night into the day, and merges the day into the night? That He subjected the sun and the moon, each running for a stated term? And that God is Cognizant of everything you do?
30 That is because God is the Reality, and what they worship besides Him is falsehood, and because God is the Exalted, the Supreme.
31 Have you not seen how the ships sail through the sea, by the grace of God, to show you of His wonders? In that are signs for every persevering, thankful person.
32 When waves, like canopies, cover them, they call upon God, devoting their religion to Him. But when He has delivered them to dry land, some of them waver. No one renounces Our revelations except the treacherous blasphemer.
33 O people! Be conscious of your Lord, and dread a Day when no parent can avail his child, nor can a child avail his parent, in anything. The promise of God is true. Therefore, do not let this life deceive you, nor let illusions deceive you regarding God.
34 With God rests the knowledge of the Hour. He sends down the rain, and He knows what the wombs contain. No soul knows what it will reap tomorrow, and no soul knows in what land it will die. God is All-Knowing, Well-Informed.
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