アン・ナスル(アラビア語: النصر, an-naṣr、”Help”,or “[Divine] Support”「助け」「神の支え」)は、クルアーンの第110章であり、3つの節から成る。アン・ナスル(An-Nasr)とは、英語では「勝利」「助け or 援助」と訳される。アル・カウサルに次いで2番目に短い章である。第112章アル・イフラースは、アン・ナスルよりもアラビア語の単語数が少ないが、4つの節がある。「手助け」「力添え」を意味する「ナスル」という語にちなんで名づけられた章である。一般にマディーナ啓示とされているが、ヒジュラから十年めの巡礼時に、マッカで啓示されたとする伝承も存在する。預言者の死期が近づいていることを、初めて公に示したものとして受けとめられている。
110. VICTORY (an-Nasr)
ألنَّصْر【アラビア語】
援助 アン=ナスル 朗読音声
援助 アン=ナスル【日本語訳】
慈悲あまねく、慈悲深いアッラーの御名において。
1 アッラーの助けと勝利が到来し、 2 人々が群れをなしてアッラーの宗教に入るのを見たなら、 3 称賛をもってあなたの主を讃美し、赦しを願いなさい。本当にこれぞ幾度でも悔い改めを受け入れる御方。
援助 アン=ナスル についての解説【日本語訳】
この章は、預言者が受け取ったコーランの最後の啓示の1つ。その啓示は、ヒジュラ暦10年の別離の巡礼でのマッカの境内か、巡礼から戻ってすぐのマディーナだった。
真理の呼びかけを広めるダーワー(人々をイスラームに招く行為)には、常に神の特別な恩恵が伴う。預言者とその仲間たちは、ダーワーの道においてたゆまぬ努力をした。最終的には神の援助があり、何千人もの人々がイスラム教を受け入れ始めた。多くの近隣諸国がイスラームの勢力に加わった。
それでも、信者たちは成功によってますます謙虚になり、自分の失敗を自覚するようになった。そのような時、彼らは神の恩寵と慈悲を実感して圧倒されたに違いない。彼らはすべての成功を神のいつくしみと慈悲のおかげだと信じていた。
信者にとって、成功は謙虚な気持ちを高めてくれる。たとえそれが明らかに正しい行為であっても、神の赦しを求める。 一見、自分の努力で達成したように見える成功でさえも、それは神の意志によるものであるからと考える。
VICTORY (an-Nasr)【英語訳】
In the name of God the Gracious, the Merciful.
1 When there comes God’s victory, and conquest. 2 And you see the people entering God’s religion in multitudes. 3 Then celebrate the praise of your Lord, and seek His forgiveness. He is the Accepter of Repentance.
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