アル=フィール(アラビア語:الفيل、”The Elephant”「象」)は、クルアーンの第105章で、5つの節からなる。メッカ期のスーラに分類される。このスーラは疑問形で書かれている。アビシニアの提督アブラハ・アル=アシュラムという人物に関連する章である。キリスト者の彼は、ヒムヤル王国を支配していたユダヤ教徒をヤマンから放逐し、カアバの巡礼者たちを取り込むべく、サナアに教会を建立した。アブラハはカアバを破壊しようと、軍勢を率いてマッカを目指し、大規模な遠征をおこなった。彼は一頭ないし複数の象を伴っていたが、それはアラブを大いに驚かせた。伝承によれば、最後のあと一歩という地点で象が進軍を拒み、立ち往生しているところに、翼ある生きものが飛来し、軍勢に投石したといわれている。預言者ムハンマドの生まれ年に起きた出来事であった。
105. THE ELEPHANT (al-Fil)
ٱلفِيل【アラビア語】
象 アル=フィール【日本語訳】
慈悲あまねく、慈悲深いアッラーの御名において。
1 あなたは見なかったか、あなたの主が、象の仲間たちをどう扱ったか。 2 彼らの企みをくじいたではないか。 3 また彼らの上に、鳥の群れを送り、 4 石を砕い (て焼いた) たつぶてを、投げつけ、 5 彼らを、食い荒らされた藁のようにした。
象 アル=フィールについての解説
アブラハは紀元6世紀、アラビア南部イエメンのキリスト教徒支配者であった。彼は宗教的狂信から、西暦570年(預言者の生誕の年)にマッカを攻撃し、カアバを破壊して滅ぼそうとした。彼は6万人の兵士と約10頭の象からなる軍隊を連れていった。そのため、彼らは「象の人々」と呼ばれた。
マッカに近づくと、象たちは先に進もうとしなかった。その上、鳥の群れがくちばしや爪に小石をくわえて飛んできた。小石をアブラハの軍に浴びせると、軍全体が奇病に冒された。軍隊は恐怖を感じ、逃げ出した。しかし、アブラハを含む多くの兵士が途中で死んだ。
これは、預言者やその使命に敵対する者は、象の軍隊のように打ち負かされるという啓示であった。
そしてこれは、預言者が君臨することを示す全能の神の導きである。神によって彼に啓示された神聖な書物は、全人類の導きのために永遠に守り続けられるであろう。
THE ELEPHANT (al-Fil)【英語訳】
In the name of God the Gracious, the Merciful.
1 Have you not considered how your Lord dealt with the People of the Elephant? 2 Did He not make their plan go wrong? 3 He sent against them swarms of birds. 4 Throwing at them rocks of baked clay. 5 Leaving them like chewed-up leaves.
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