アル・ハーッカ(アラビア語: الحاقة)は、クルアーン第69章であり、52節から成る。”The Inevitable Hour”(避けられない時)、”The Indubitable”(揺るぎないもの)、”The Inevitable Truth”(避けがたい真実)、”The Reality “(現実)などのいくつかの別名がある。これらの章題は、最初の3つの節に登場する al-Ḥāqqa に由来しており、主要テーマである「審判の日」を意味している。
アル・ハーッカはメッカン期のスーラであり、ムハンマドがメディナではなくメッカに住んでいたときに啓示された。メッカのスーラは初期、中期、後期に分かれている。テオドール・ネルデケは、スーラの年表の中で、このスーラが啓示されたのはメッカン期の初期であるとしている。
この章は、タムード、アード、ファラオの運命、倒壊した他の町、預言者ノアの時代に起こった洪水について語っている。 そして忠誠な者への恩恵と不信者への罰について論じている。 最後に、このメッセージは預言者自身が作ったものではなく、宇宙の主の啓示であることを人々に思い知らせている。
الحاقة【アラビア語】
真実(避けがたい現実)アル・ハーッカ 朗読音声
真実(避けがたい現実)アル・ハーッカ【日本語訳】
慈悲あまねく、慈悲深いアッラーの御名において。
1 避けがたい現実。 2 避けがたい現実とは何か。 3 避けがたい現実とは何であるかを、あなたがたに分からせるのは何か。 4 サムードとアード (の民) は、衝撃の惨禍 (の訪れ) を嘘であるとした。 5 そのためにサムードは強烈な雷撃に滅ぼされ、 6 またアードは、猛烈な暴風に滅ぼされた。 7 かの御方は、それ (暴風) を七夜と八日にわたり、立て続けに彼らに科した。あなたにも、その中にいた民が、枯れて幹がうつろになったなつめやしのように倒れるのを見ることができただろう。 8 しかしあなたには、何か彼らが残したものを見ることができるだろうか。 9 それからフィルアウンも、彼以前の者たちも、転覆させられた数々の町も罪を犯していた。 10 また彼らは、その主の使徒に逆らった。それゆえかの御方は、抗しがたい捕え方で彼らを捕えた。 11 本当に、水が氾濫したとき、われらがあなたがた (の祖先) を舟で運んだのは、 12 それをあなたがたへの戒めとし、また自覚ある (者の) 耳に、それを自覚させるため。 13 喇叭がひとたび、吹き鳴らされるとき、 14 大地と山々は持ち上げられ、一撃で打ち砕かれ、 15 その日、起こるべくしてそれが起こる。 16 その日、天は割れておぼつかなくなる。 17 その縁という縁に、天使たちが控えている。その日、八名の者があなたの主の玉座を高く捧げ持つ。 18 その日、あなたがたはことごとく露わにされる。押し隠してきたものも、何ひとつとして押し隠しとおすことはできない。 19 それから、その右手に自分の記録を与えられた者は言う。「さあ、私の記録を読んでください。 20 私は、いつか必ず自分の清算に立ち会うだろうと確信していました」。 21 その者は、喜びの生に入るだろう。 22 いと高い楽園の中で、 23 諸々の果実の房は手近にあり、 24 「満ち足りて食べ、飲みなさい。過ぎ去った日々に、あなたがたがあらかじめ行ってきたことのために」。 25 しかし、その左手に自分の記録を与えられた者は言う。「私の記録など、与えられずに済んだなら。 26 自分の清算とは何であるか、何も知らなかった。 27 『死をもって』すべてが終わったならよかったのに。 28 私の財は何の役にも立たず、 29 権威も私から去ってしまった」。 30 「その者を捕えてつなぎなさい。 31 そののち、業火で焼きなさい。 32 そののち、長さ七十腕尺の鎖で巻き締めなさい。 33 その者は偉大な御方であるアッラーを信じず、 34 貧しい者を養うよう勧めもしなかった。 35 それゆえ、この日、ここに (支えてくれる) 親しい友はひとりもいない。 36 汚れた膿汁の他に、食べるものもない。 37 あるのは、罪深い者の他には誰も食べないものだけ」。 38 いいや、われは誓う。あなたがたに見ることのできるものにかけて、 39 またあなたがたに、見ることのできないものにかけて。 40 本当に、この (クルアーンの) 御言葉は貴い使徒からのもの。 41 これは詩人の言葉ではない。あなたがたのうち、信じる者はわずかであるが。 42 これは、占者の言葉でもない。あなたがたのうち、憶える者はわずかであるが。 43 それは諸世界の主からの啓示。 44 もし彼 (ムハンマド) が、われらについて何かしら (嘘の) 言葉をねつ造したなら、 45 われらは、必ず彼の右手を捕え、 46 その頸動脈を断ち切るだろう。 47 そしてあなたがたのうち、彼を守ることのできる者は誰もいない。 48 本当に、これは畏れる者への戒め。 49 われらは、あなたがたの中に、これを嘘よばわりする者がいるのを知っている。 50 本当にこれは、(真理を) 拒む者にとり悲嘆であるに違いない。 51 しかし本当にこれは、絶対の真理ではないか。 52 それゆえあなたの主たる偉大な御方の御名を讃美しなさい。
真実(避けがたい現実)アル・ハーッカの解説と解釈
☪︎ あなたがたに分からせるのは何か
死後の世界をはっきり否定する者がいる。そしてはっきり否定しないまでも、心の中では現世のことだけを重要視する者もいる。この2つは同じであり、こうした人々の生き方に違いはない。
神の目から見れば、どちらも来世を拒絶する者であり、一方は口先だけで拒絶し、他方は実際に拒絶している。神の掟に従い、このような人々は皆、破滅に向かう。
審判、あるいは清算がなされる日は途方もなくすさまじい日となるだろう。その日の重要性が強調されている。
☪︎ 水が氾濫したとき、われらがあなたがたを舟で運んだ
ヌーフを襲った大洪水を示している。『われらがあなたがたを舟で運んだ』とは、”あなたがた人類の祖先を運んだのはわれら神である” ということを意味している。”われらがそうすることを惜しんだなら、あなたがた人類はこの世に存在すらしていないのである”。
☪︎ その日、あなたがたはことごとく露わにされる
今のこの世界は、人間に試練を与えるために作られた。試練の期間が終わると、この世界は取り壊され、新たな条件に合うような新しい世界が造られる。今は間接的に、神の威光が現われているが、その時には直接はっきりと現れるだろう。
☪︎ 自分の清算とは何であるか、何も知らなかった
現世で神を畏れることをやめない者が、来世では成功する運命にある。一方、現世でそのような畏れを持たず、傲慢な生き方をする者は、来世で最も厳しい懲罰を受けることになる。
☪︎ 貧しい者を養うよう勧めもしなかった
信仰を拒否することの罪についての言及の直後に、貧者に食物を分け与え、養うよう奨励しないことが重大な罪として挙げられているのは注目すべき重要な点である。
☪︎ この御言葉は貴い使徒からのもの
そしてその言葉の主とは、いと高き神である。預言者ムハンマドはそれを天使ジブリールから受け取り、伝えた。
THE REALITY (al-Haqqah)【英語訳】
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