アル=カドル(アラビア語:القدر、”Power, Fate”「力、運命」)は、クルアーンの第97章(スーラ)であり、5つの節がある。メッカで啓示されたスーラで、のちにクルアーンとなる最初の啓示が下された夜を祝うものである。この章は、最初の節にあるアルカドルという言葉にちなんで名付けられた。主に力について書かれている。何年にも及んだ神の啓示が初めて地上に届けられたのは、ラマダーン月の23日、25日、または27日めの夜であったと信じられている。
القدر 【アラビア語】
みいつ (天命) アル=カドル【日本語訳】
慈悲あまねく、慈悲深いアッラーの御名において。
1 われらは、それ (クルアーン) をカドルの夜に下した。 2 カドルの夜とは何であるかを、あなたがたに分からせるのは何か。 3 カドルの夜は、千の月よりもはるかに良いもの。 4 その中を、主の思し召しにより天使が、精霊が、すべての命令をたずさえて降臨する。 5 これこそは平安 (の夜)、夜の明けるまで。
みいつ (天命) アル=カドルについての解説
ある年のとある日の夜(おそらくラマダーン月の終わりの日の夜)は、神による決意の夜。一年を通じ、天使たちが世の統治に関する何らかの任務を遂行しなければならず、地上に降臨し、その手配をするのである。
同じようなある夜、クルアーンの啓示が始まった。これは天使ジブリール (ガブリエル) のこと。
その夜、地上には天使があふれている。霊的に覚醒した者はこの雰囲気に影響され、その結果、霊性に染まり、通常の状況での行いに比べて、その時の宗教的行いの価値が高まる。
このため、月の終わりの10日間に近づくにつれ、礼拝者はより多くの時間を礼拝に費やし、より多くの慈善を施し、クルアーンをできるだけ多く読み、主の慈悲と許しを請う。
預言者の妻アーイシャーは、もし運命の夜ライラトゥル・カドルを見つけたら、どのように祈るべきかと預言者に尋ねたとき、彼女に次のような簡単な祈りを教えられた: Allahumma innaka afuwwun, tuhibbul afuwa, fa afuanni. アッラーよ、あなたは寛容であり、許しを好まれます。わたしのこともお許しください。
ある日、預言者ムハンマドはカドルの夜の時間についての情報を得た。その知らせを伝えるために何人かのサハバたちのところへ行った。しかし、不運にもその途中で二人のムスリムが言い争っている光景に出くわした。
預言者ムハンマドはその重要な情報を忘れてしまったのだが、後に彼はカドルの夜がいつなのかを知る手がかりを与えてくれた。それはラマダンの最後の10日間、特にラマダンの21日、23日、25日、27日、29日のような奇数日の夜であることは間違いない。ラマダンの27日目の夜ではないかと考える者もいる。
この章では、アッラーからの偉大な贈り物について述べられている。そのひとつはクルアーンについて。これは、この世に生きるすべての人々のためのものである。まさに奇跡であり、人類のための導きの書である。この偉大な贈り物は、ムスリムだけのものではない。全人類のための最後の聖典であり、指針である。
クルアーンには、この世と来世を平和に生きるための社会的、個人的なアドバイスがすべて書かれている。この偉大な書物は、610年のカドルの夜から預言者ムハンマドにもたらされ始めた。その夜から少しずつ、ジブリールがクルアーン全体をムハンマドに授け、クルアーンが完成するまでに約23年を要した。
この章では、アッラーがムスリムだけに与える2つ目の特別な贈り物についても触れている。
ある人が80年間休みなく昼夜を問わず祈り続けるとしよう。その人はアッラーから、そしてムスリムとして、多くの恩恵を受けられるだろう。もしカドルの夜に、夜通し礼拝をするならば、80年間休みなく祈った人よりも多くの恩恵を受けられるだろう。その人よりも多くの恩恵を受けることになる。
預言者アダムの時代、あるいはそうでなかった時代に、ある善良な人が千年間生き続け、昼も夜も祈り続けた。しかし今日、ムスリムである者が、一生のうちに数回、この夜に祈るだけで、その人よりも多くの報いを得ることができる。
アッラーは、この一夜は千ヶ月以上であり、一万ヶ月以上かもしれないし、何百万、何億ヶ月かもしれないと仰せられた。つまり、この夜は、私たちが天国に行きやすいように、無限の恩恵を与えるためのアッラーの計らいなのだ。
だから預言者ムハンマドは、もしその夜を逃したり無駄に過ごしたりしたら、非常に不運なことだと言われた。預言者は、ラマダンの最後の10日間、ずっとモスクの中で生活していた。その10日間は、常に慎重になり、懸命に取り組んだ。
その特別な夜、アッラーは何百万、何十億もの天使をこの世に遣わされる。天使らは、誰かが祈りを捧げたり、イスラムの仕事をしているのを見れば、その人のためにアッラーに祈りを捧げる。
また、カドルは運命の夜、あるいは幸運の夜だと信じる者もいる。その夜、アッラーは天使に私たちの一年の計画を授ける。これから一年の間に私たちの人生に何が起こるのか、健康なのか、不健康なのか、死ぬのか、新しい仕事に就くのか、結婚するのか、赤ん坊ができるのか、等々。
あらゆる未来の出来事がアッラーによって決定される。そして天使たちはこの情報を得て、それに従って働き始める。その天使たちのリーダーは、最も強力な天使の一人である。アダムからムハンマドに至るまで、彼の主な仕事はアッラーの聖典や直接のメッセージをすべての預言者に届けることだった。
預言者ムハンマドの死後、彼の仕事は終わったが、アッラーは毎年、カタールの夜だけ彼を地上に送り、この夜を非常に力強く守り、邪悪な力やシャイタンが、日没から日の出までのこの平和な夜を台無しにできないようにしている。この夜はとても平和で、祝福に満ちている。
DECREE (al-Qadr) 【英語訳】
In the name of God the Gracious, the Merciful.
1 We sent it down on the Night of Decree. 2 But what will convey to you what the Night of Decree is? 3 The Night of Decree is better than a thousand months. 4 In it descend the angels and the Spirit, by the leave of their Lord, with every command. 5 Peace it is; until the rise of dawn.
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