アル=カウサル(アラビア語: الكوثر、”Abundance”「豊かさ」)は、クルアーンの第108章である。最も短い章であり、3つの節から成る。Kauthar という単語は、ك – ث – ر (k – th – r)という三文字語根から派生したもので、”数が増えること、数で勝ること、頻繁に起こること、富や子供たちに誇りを示すこと、豊かであること、豊富であること “という意味を持つ。Kawthar という形自体は、「豊かさ、多さ」を意味する集約的な非言語名詞。クルアーンではこの章にのみ登場する語である。預言者に後継者として宗教を守る息子のないことを嘲笑した信仰なき者たちへの応答という意味合いも含まれている。
96. CLOT (al-‘Alaq)
ٱلكَوْثَر【アラビア語】
潤沢(豊穣)アル=カウサル 朗読音声
潤沢(豊穣)アル=カウサル【日本語訳】
慈悲あまねく、慈悲深いアッラーの御名において。
1 本当にわれらは、あなたに豊穣を与えている。 2 それゆえあなたの主に礼拝し、(犠牲としてささげる家畜を) 屠りなさい。 3 あなたを憎む者は、きっと断たれるだろう。
潤沢(豊穣)アル=カウサルについての解説
これはクルアーンの中で最も短い章であり、わずか3節から成っている。マッカで啓示された。タイトルは最初の節から取られている。アル・カウサルとは、楽園を流れる川の名前で、その水は神を敬うムスリムだけのものである。
真理を拒む者たちは、預言者ムハンマドには息子がなく、イスラーム教は後を継ぐ者もいないと嘲笑していた。しかし、クルアーンによれば、現世でも来世でも、将来の希望から断ち切られたのは、実は預言者の敵対者たちであり、預言者は神から潤沢を授かったのである。
この章が啓示された当時、預言者はマッカでクライシュの厳しい反発に直面していた。彼の呼びかけに応じる者はほんの一握りだった。その困難な時に、この章は預言者とムスリムへの希望のメッセージとなった。
預言者ムハンマドは、すべての人を真理へと導くという純粋な使命を担って生まれた。現在の世では、これは最も困難な課題である。だから、この使命のために、彼はすべてを放棄しなければならなかった。彼は自身の住む地域社会から孤立した。経済的な立場は台無しになった。子供たちの未来は暗くなった。数人を除いて、誰も彼を支援しなかった。
しかし、このような非常に落胆させられる状況下で、彼は全能の神から『われはあなたに豊かさを与えた』、すなわちあらゆる種類の最高の成功(ここで言う kawthar とはkhayr kathirのこと)を与えられた。クルアーンのこの予言は、後年、文字通りに実現している。
この約束は、預言者に従う者たちにもある程度適用された。彼らもまた、預言者とその仲間と同様に神聖な宗教の大義のために立ち上がるのであれば、『良いことの豊かさ』があるのである。この『豊かさ』は、現世から来世にまで及ぶ。それは尽きることがない。
冒頭に示した通り「カウサル」には複数の意味がある。偶像を奉ずる人々は、預言者を「アブタル」と呼び、彼には息子がおらず、よって誰からも忘れ去られるだろうと暗に揶揄した。しかし現実には、彼の名前は日に5回ムアッズィンたちの礼拝の時刻を知らせるアザーンのたびに世界各地において声高く唱えられるようになった。
PLENTY (al-Kawthar) 【英語訳】
In the name of God the Gracious, the Merciful.
1 We have given you plenty. 2 So pray to your Lord and sacrifice. 3 He who hates you is the loser.
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参考図書: